「摂食障害」から「摂食症」へ―名称変更が拓く回復への新しい道

2026年、日本摂食障害学会が病名の表記を「摂食障害」から「摂食症」へと変更すると発表しました。「障害」という言葉が「治らない病気」という誤解や偏見を生み、患者や家族を苦しめてきたことへの配慮から、この歴史的な決断に至ったのです。

病名に含まれる言葉は、患者の心に深く影響を与えます。「障害」という表記は、回復の可能性を感じさせず、むしろ絶望感を強めてしまうことがありました。一方「症」という表記は、適切な治療によって改善できる「病気」であることを明確に伝え、希望を持って治療に臨むきっかけとなります。

摂食に関する問題を抱える人々の多くは、周囲の無理解や偏見に苦しんでいます。「わがまま」「甘え」と誤解されたり、本人の意思の問題として片付けられたりすることで、治療を受けることへの抵抗感が生まれてきました。名称変更は、これが治療可能な医学的疾患であることを社会に広く認識してもらう第一歩となるのです。

早期発見・早期治療の重要性は、摂食症において特に強調されるべき点です。発症から治療開始までの期間が短いほど、回復の可能性は高まります。しかし病名への偏見が受診をためらわせ、症状を悪化させてしまうケースが少なくありませんでした。

この名称変更は、医療現場だけでなく教育現場や家庭にも影響を及ぼします。学校の保健室や家庭での会話において、「摂食症」という言葉は「治療すれば良くなる病気」というメッセージを自然に伝えます。言葉が変わることで、患者を取り巻く環境全体が、より支援的で前向きなものへと変化していくでしょう。

医学界では近年、患者の尊厳と回復への希望を重視する動きが加速しています。精神疾患の名称見直しもその一環であり、言葉の持つ力を認識した上での改革が進められています。摂食症の名称変更も、こうした世界的な潮流に沿った、患者中心の医療を実現するための重要なステップなのです。

名称が変わっても、病気の本質が変わるわけではありません。しかし言葉が変わることで、社会の認識が変わり、患者が治療を受けやすくなり、回復への道が開かれます。「摂食症」という新しい名称が、すべての当事者とその家族に、希望という光をもたらすことを願ってやみません。

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